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トラックに頭部を潰された少女。1分後、見知らぬ人が彼女をつかんだ。その後彼がしたことが世界中に知れ渡る。

22歳の若いオーストラリア人、アデレード・ストラットンは2016年7月14日、フランスのニースへ旅行中でした。彼女の旅行は、フランスの革命記念日の休日に催される予定だった花火のように華やかで活気に満ちたものとなるはずでした。しかし、それは悲惨な結末を迎えてしまいます。

彼女はその日、一緒に旅行している3人の友人たちとプールパーティを遊んでいました。その後彼らは花火が良く見える海沿いの遊歩道、プロムナード・デ・ザングレ(la promenade des Anglais)へ向かいます。地獄へ足を踏み入れようとしていることなど、知る由もありませんでした。

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2016年7月14日のその夜、テロリストが運転する大型トラックがプロムナードで花火を見物していた大勢の人々の中に突っ込み、アデレードと友人のマルカスはバスから降りたばかりのところを跳ねられてしまったのです。アドレードは頭の付け根と、右足をを潰されました。

アデレードはそのとき何が起こったのかをはっきり思い出すことができないといいます。叫び声、パニック、血、大量の血、そして彼女の記憶は途切れています。

Facebook/Sunday Night

10メートルほど引きずられたところで目を覚ましたアドレードは、1人の男性が彼女の手を握り、知らない言葉で優しく語りかけてくれていたことを覚えています。

パトリックは、この地域に住む40歳の男性でした。

「トラックは私たちの方には突っ込んで来ませんでした。まだ生きているかもしれない人を助けられるのではと思い、行ってみることにしました。彼女は私の手を強く握っていました。生きている人を見つけることができて嬉しかったとの同時に、悲しくもありました」パトリックは説明します。

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パトリックはアデレードの視界に死体が入らないようにしたといいます。

「どうか、行かないで」

そう繰り返すアデレードのそばをパトリックはずっと離れませんでした。

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パトリックは近くのホテルのロビーまで彼女を連れて行き、到着した救急車に同乗し、病院まで付き添いました。

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頭部の骨折だけでも死と麻痺の恐れがありました。アドレードは額にも大きな怪我を負っており、その後、頭蓋骨内部にも損傷が確認されます。

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パトリックは彼女の両親がオーストラリアから到着するまでの間、彼女の様子を見に、病院に毎日通いました。

頭には包帯、首にはギブスが取り付けられました。アデレードはサングラスをかけて顔の傷を隠していましたが、強い鎮痛剤の効果もあって気持ちは元気でいることができたと振り返っています。

しかし両親が到着すると、パトリックは彼女が家族だけで時間を過ごせるようにと病院に行く回数を減らしていきました。やがて飛行機に乗れるほどまでに回復したアデレードはオーストラリアに戻り、その後二人の間の連絡は途絶えていました。

アデレードの回復の様子を取材し続けていたオーストラリアのテレビ番組サンデーナイトは、ある日彼女を驚かせようと、彼女とフランス人救世主との再会を企画します。パトリックがシドニーに降り立ち、アデレードが家族とレストランで昼食を取っているときに登場するという計画でした。

「ここで何をしてるの?ありえない!」

アデレードはパトリックの登場に驚きました。彼女はその後すぐに、パトリックがこれまで出会った中で最も勇気ある男性だと彼に伝えました。

「信じられない!彼に再び会えると思ってなかった!」

彼女は命の恩人にどうやって感謝を表したらいいかわからないといいます。

「自分の命を救ってくれた人に、どう感謝したらいいのでしょう?」

アデレードは、あの夕方、ニースで46人が殺害され、400人が負傷したということを知っています。しかし彼女にとって、あの日の事件は別の意味を持っています。

「私が記憶しているのは、テロリストのことではありません。私は覚えているのはパトリック、そして助けてくれた人々のことです。私が覚えているのは、愛、思いやり、そしてたとえ恐ろしい出来事の中で出会えた人間の美しさです」

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世界の悲惨なニュースに日々接していると、物事を悪い方へ悪い方へと考えがちです。世界を変えるのに必要なのは、テロリストを殺すことでも「悪意のある」人々を中傷することでもなく、一つひとつのこうした小さな思いやりの行動なのかもしれません。

アデレードの物語はこちらのビデオでもご覧いただけます。(英語音声のみ)

パトリックはきっと、優しさこそが悪に打ち勝つ最大の武器だということを知っていたのでしょうね。