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クリスマスの夜 20ドルから始まった奇跡の物語

クリスマス。それは、世界の誰もが、幸せになれる日。

今回紹介するのは、アメリカで実際に起こった、20ドル札から始まった奇跡の物語です。その物語の始まりは、今から50年前に遡ります。

 

1971年、ミシシッピ州ヒューストン。クリスマスの夜の出来事でした。

23歳のラリー・スチュワートは、飢えていました。

若くして化粧品会社を起業したラリー。しかし経営に失敗し、ラリーはホームレス同然の状態でした。8日間もろくな食事をとっておらず、空腹で、朦朧とする意識の中、たどり着いた温かいダイナー。

ラリーはダイナーで食事を注文すると、無我夢中で食事を平らげました。しかし、支払いの段階になって、ラリーはポケットにお金が入っていないことに気づきます。

Merry Christmas from Chipley

ラリーは警察に突き出されることを覚悟しました。

けれども、 ダイナーで働いていた店員「クッキー」は、ラリーが困っていることに気がついたのです。

クッキーは食事代は要らないと言い、ラリーの車のガソリンタンクを満タンにしてくれました。

そしてラリーが去ろうとすると、店員のクッキーはラリーに20ドル札を渡して、こう言ったのです。

「あ、これ、さっき見つけた20ドルだよ。きっと君が落としたんだろう?」

そうか、お金はポケットから落ちてしまっていたのか。そう納得したラリー。こうして、ラリーはピンチを乗り越えることが出来たのです。

highway

それから数年後。

ラリーは今度は警備会社を立ち上げていました。愛する妻と子供と共に幸せな家庭を築いていましたが、またも苦難が降りかかります。1977年に会社が倒産してしまい、莫大な借金を抱えてしまったのです。

もう後がないところにまで追い詰められたラリー。銀行強盗をする計画を立て、拳銃を手に、銀行へ入っていきます。

そこで、ラリーの目に窓口にあった20ドル札が飛び込んできたのです。

20ドル札を見た瞬間、ラリーの頭の中で、何かがフラッシュバックしたのです。

あの時の、あのダイナーの店員クッキーが渡してくれた、20ドル札…ラリーの心の中に、善良な心が帰ってくると共に、ある疑問が浮かんできたのです。

「あの時の20ドル札は、本当に私が落としたものだったのだろうか…?」

 

心を落ち着けて、ふたたびあの時のダイナーを再び訪れたラリー。

クッキーに再会し、あの時のことを尋ねると、クッキーはこう言ったのです。

「クリスマスは、みんなが幸せになれる日なんですよ」

そう言って笑うクッキー。

その時にラリーは悟ったのです。あの20ドル札は、自分が落としたものなんかではなく、他でもないこのクッキーが自分に恵んでくれたものだったのだと。

その事実に気づいた時、ラリーは悪しき心を持ったことを深く後悔し、そして天にこう誓ったのです。

自分もいつかきっと、困った人を助けられる者になろう、と…。

Sky

数年後。

アメリカの街では、ある人物の噂で持ちきりでした。

なんでもクリスマスになるたびに、赤い服に赤い帽子、白いオーバーオールをまとった姿のサンタさんが突如現れ、ホームレスや貧しい人々に20ドル札を配って回っていると言うのです。

「メリー・クリスマス!」

その活動は何年にも渡り続いていましたが、サンタの仮装で顔が隠されていた上に、決して名前を明かさないことから、その人物の正体を知る者はありませんでした。

都市伝説のように噂は広まっていき、人々はいつしか、その男を親しみを込めてこう呼び始めます。

「シークレット・サンタ」と…。

Santa

その匿名の優しい人物は街のひっそりとした名物のようになっていました。

しかし2006年。

突如として、人々はその人物の素顔を知ることとなります。

テレビカメラの前で、突如その男は自分の正体を明かしたのです。

その男の名前は、ラリー・スチュワート。

20ドル札に、自分の人生を救われた男です。

ラリーは20ドルの事実を知ったあの日から、懸命に仕事に取り組みました。そして長距離電話の会社を立ち上げ、最終的に経営者として見事に成功を収め、大富豪になったのです。

しかし裕福になった後も、クリスマスには欠かさずに、あることに取り組んでいました。

それは、サンタの格好に身を包み、恵まれぬ人々に20ドル札を配り続けること。自分が20ドルに人生を変えられたように、この20ドルで誰かを救うことができれば…ラリーを突き動かしていたのは、あの時に受けた恩だったのです。

ラリーの活動は、20ドル札を配ることだけに止まりませんでした。

ニューヨーク、ワシントンD.C.、サンディエゴ、フロリダ、ミシシッピなどの都市をめぐり、テロや火事、ハリケーンなどで窮地に立たされている人々にも、寄付を行なっていたのです。

25年間に渡り、このような匿名のチャリティ活動を続けていたラリー。寄付した総額は、実に120万ドル(1億4千万円)に達しました。

しかしどうして急に、自分の素顔を明かそうと思ったのでしょうか?自分の功績を自慢したかったから?いいえ、そうではありません。

実はラリー、この時すでに食道ガンに侵されていたのです。自分の余命が長くないと悟っていたラリー、最後に、人々の前で自分の素顔を明かし、「どうかこの思いやりの輪を切らないでほしい」と、メッセージを送ったのです。

そしてそのわずか1ヶ月後、ラリーは天国へ旅立っていきました。

My Fathers Funeral

シークレット・サンタがいなくなってしまったと悲しみに暮れた人々。

もう2度と、あの優しさと慈しみに溢れた寄付を見ることはできないのだと、寂しい気持ちになっていたに違いありません。けれどもその年、2007年のクリスマス、人々は驚くべき光景を目にするのです。

なんと街には、恵まれない人々に20ドル札を配るサンタが現れたのです!それも、一人ではなく、何人も。

それはラリーの意志をしっかりと受け取った人々でした。

「メリークリスマス!」

その声は幸せな笑い声と共にこだまして、街中にどこまでも響いてゆきました。

シークレット・サンタの活動は、ラリーの意志を受け継ぐ人々によって今も続けられており、多くの人々が救われています。

その団体には今も、「ぜひ参加したい」と多くの人が集まっています。しかし団体に入るためには、ある条件をクリアしないといけません。その条件はとってもシンプル。

「少なくとも1回、他人への親切な行為すること」

困っている人に手を差し伸べることを、決してためらわないでください。誰もが、誰かのサンタになることができるのです。

 

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