毎年夏に行なわれるフェロー諸島の捕鯨に「非人道的」「無意味だ」と批判の声

世界にはさまざまな文化や思想が存在し、自分が正しく当たり前だと思っていることでも、想像以上に多くの見方や立場があることに度々驚かされます。 時として私たちは、その間で分かり合えず苦しみ、それでも繋がる必要を感じつつ、互いを理解しようと努力するのです。

1940年代頃から続くクジラやイルカの捕獲をめぐる国際的な論争は、さまざまな文化論や思想が絡み合い、問題は複雑化しています。世界のクジラの頭数が回復しないなか、捕鯨反対のムードは欧米を中心に現在高まりつつあります。デンマーク自治領のフェロー諸島で毎年夏に行なわれている、「グリンド(Grindadrap)」と呼ばれるゴンドウクジラの追い込み漁も「非人道的な大量虐殺」として非難されており、環境保護団体の告発とともに公開された画像が近年、話題を呼んでいます。これらの画像は、日本の南極海調査捕鯨や和歌山県太地町の追い込み漁に対して過激な妨害を行ってきた「シー・シェパード」のメンバーが撮影したものです。追い込み漁の様子を移した写真を見て、皆さんは何を思うでしょうか。

*先のコンテンツには、衝撃的な画像が含まれます。気になる方は閲覧せず、ブラウザバック等をお願いいたしします。

フェロー諸島では、16世紀頃から追い込み漁が続けられてきました。クジラやイルカの漁について記した記録は1709年までさかのぼることができるそうです。農業の発展が難しかったフェロー諸島の住民にとって、ゴンドウクジラは貴重なタンパク源でもありました。

Grindefangst i Torshavn

食用クジラの捕獲だったため、この地域では当時、必要以上の乱獲が行なわれることはありませんでした。この追い込み漁は現在の島民にそのまま受け継がれ、今では伝統行事として毎年行なわれています。

湾の海底はクジラの骨で埋め尽くされているそうです。ここで多くのクジラが捕獲されてきた痕跡です。

Grindefangst i Torshavn

息をのむほどの景観を誇るフェロー諸島ですが、毎年、漁が行なわれる湾はクジラの血で真っ赤に染まります。

Gjógv

漁では、漁船に乗った人々が連絡を取り合いながら、クジラやイルカの群れを囲むようにして湾へと追い込みます。浅瀬に追い込まれたクジラは、浜に待機している人々によって一匹ずつ銛とナイフで仕留められます。囲まれた動物たちに逃げる隙はありません。

世界各地で行なわれているイルカやクジラの追い込み漁に比べても、フェロー諸島のものは多くの船が参加する大スケールのものです。クジラから吹き出た大量の血によって、海が広範囲にわたって真っ赤に染まります。

しかし現在のフェロー諸島には捕鯨を専門する漁師は存在しないそうです。参加したい住民なら誰でも参加でき、多くの子どもたちも参加します。コミュニティー全体が参加する漁なのです。

仕留められたクジラは、浜に重ねられていきます。

一日の漁で、40頭以上のクジラが捕獲されます。

以前は重要な栄養源として食されてきたゴンドウクジラの肉ですが、実は現在では多くのフェロー諸島の人々が食べるのを拒否するようになっているそうです。水銀といった有害物質が多く含まれているためです。この地域のゴンドウクジラやイルカは、消費するのに適さなくなっているという報告もあります。

それでは、何故この漁が続けられるのか?

肉が食されなくなりつつあるなか、これほどの大規模な漁を行なうのは「非人道的」「無意味だ」と欧州を中心に批判の声があがっています。こちらのメスのクジラから産まれる前の胎児が取り出された画像は、特に多くの人の注目を集めました。

こちらはその後に、ゴミ箱に捨てられていた胎児の写真です。反捕鯨活動家に対して「自分たちの生き方、食文化を守るのは大切なことだ」というのが島民の意見です。

これを「文化」と捉えるか、「動物愛護の精神に反する行為」と捉えるか、意見は分かれます。

捕鯨やイルカ漁をめぐり、動物愛護、思想的、文化的な観点から、世界中でさまざまな議論が交わされています。追い込み漁の非人道性について懸念する声もあれば、「残酷だから」と感情的に非難することは文化の多様性に対する寛容性を欠いた考え方だという意見もあります。あなたはどう思いますか?

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