ちえとくをフォローする

ジーンとくる話

人間の為に長年働かされ、やせ衰えたゾウは置き去りにされた。その後、自分の身に起こることを彼女は知る由もなかった。

今年の4月、ゾウの保護活動を行なっているタイの団体Boon Lott’s Elephant Sanctuary (BLES)によって一頭のゾウが保護されました。観光客向けの「ゾウ乗り」体験用にゾウたちを飼育していたキャンプから解放されたのはソンタヤという高齢のゾウでした。しかしキャンプに到着したとき、BLESのスタッフはそこでもう一頭のゾウ、サオノイに出会います。

ソンタヤもサオノイも、辛い労働をずっと強いられてきたゾウたちでした。タイのゾウたちは、かつては林業でトラックの代わりのような役割として使われてきましたが、やがて林業が禁止になってしまった地域では、ゾウは観光産業で働くようになりました。ゾウたちは親から引き離され、若い頃から過酷な服従訓練を受けながら人が乗れるように調教されます。労働時間に制限がないキャンプなどでは、過労のため寿命の半分ほどで亡くなってしまうゾウも少なくないそうです。

年老いて働けなくなったゾウや、過酷な労働状況からゾウたちを解放し、より快適な生活を送れるように保護するのがBLESの活動です。しかしこの日BLESが保護の許可を得ていたのは一頭のみ。BLESのスタッフはサイオイを引き渡してくれるようキャンプの担当飼育員を説得しようとしましたが受け入れてもらえず、後ろ髪引かれながらサイオイをその場に置いて行くしかありませんでした。

しかし後日この同じ飼育員からBLESへ連絡が入ります。彼はその数日前にゾウの保護地区を見学におとずれていました。そしてソンタヤの見違える程に穏やかな姿に心を動かされ、サオノイにも同じ暮らしを与えて欲しいとBLESに願い出たのです。

そして再びサイオイを迎えにいくために、BLESのスタッフがキャンプを訪れました。そしてサイオイをキャンプの出口へと誘導していきます。もう2度とこの道を戻ってくることはありません。

トラックの上では、長旅に向けておやつと毛布が用意されていました。長年酷使された体は衰え、衰弱していましたが、サイオイは終始落ちついた様子でいつもと違う人間たちに興味津々だったそうです。

その後サイオイは無事BLESが運営する保護キャンプに無事到着。そこでソンタヤとも再会し、今では穏やかな毎日を送っているそうです。

晴れて自由の身となったソンタヤ、本当によかったですね。これからも元気で長生きしてください。

ゾウは大きい動物で丈夫な首をもっていますが、背中は100キロのものをのせるのが限界だそうです。ゾウ乗り体験の乗り物として働くゾウたちは、人の乗る50キロ席を担ぎ、そこに2人を乗せることもあります。大都市の排気ガスで汚染された空気の中、固いアスファルトの上を一日中歩かされているゾウたちもいます。ゾウ乗りは楽しいアクティビティに思えるかもしれません。しかしタイへの旅行の際は、観光客たちを楽しませるために多くのゾウたちが虐待を受けているということを覚えておいてください。象に触れたい!と思うのは悪いことではありません。しかし数ある象との触れ合い体験ができるキャンプのなかでもどうか、飼育・保護プログラムが整っていて、動物にストレスを与えないケアや環境作りを心がけているキャンプや施設を選ぶようにしてください。