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29歳の父親は死ぬ覚悟をした。しかし医師が息子に下した診断は、父親にとって最大の試練となる。

アメリカ、イリノイ州在住のライアンとアシュレーのワーグナー夫妻は、高校時代からの長い付き合いです。2013年夏、二人は家族と友人の立会いのもと結婚式を挙げ、間もなくしてアシュレーは第一子を妊娠します。一家の未来は輝かしいものに見えました。

しかし、ライアンが消化器系に悩みを抱えるようになって以来、夫婦の行く末に不吉な影が差します。当初、それはウイルス性の風邪だろうと思っていたものの症状は改善せず、ライアンは病院での検査を受けることにします。

結果、ライアンは結腸がんを患っていることが判明したのです。間もなく父になる29歳の青年には、あまりにも残酷な現実でした。

「衝撃でした。癌という事実は受け止めがたく、もちろん克服可能であることを願うばかりでした」アシュレーは当時を振り返ります。これまでの人生でライアンがいかに努力してきたかを考えると、あまりにも不公平な現実に思えてなりませんでした。

「まだ若く、健康的で運動を欠かさなかったライアンが、今となっては90歳の老人のような気分だとジョークを言うのです」

 

どんな治療法が有効であるのかを調べるために、ライアンにさらなる検査が施行されました。その一方でアシュレーは順調な妊娠経過をたどり、夫婦は第一子の誕生を心待ちにしていました。人生の浮き沈みに満ちた精神的にも辛い時期でした。

しかし、二人の望みは打ち砕かれます。

ライアンには回復の見込みがないことを告げられたのです。ガンは進行し、化学療法や放射線治療を行ってもわずかな延命の可能性が残されているだけでした。

「受け入れがたい現実でした。二人で、60代70代になるまでは無縁だろうと思っていた深刻な話し合いをしなければなりませんでした」アシュレーは語りました。

2014年8月、アシュレーは息子のマイルズを出産しました。暗く苦しい期間を過ごしていた夫婦にとって子供の誕生は人生を照らす一筋の光で、ライアンにも希望と力を与えてくれるものでした。残された期間がたとえわずかであったとしても、出来る限り共に充実した年月を過ごすことを楽しみにしていました。

しかし更なる悲劇的が家族に襲いかかります。

生後一ヶ月にしてマイルズが病に倒れたのです。母乳やミルクを含むどんな流動食も受け付けることができず、全て吐き戻してしまう状態でした。当初医師は胃酸の逆流によるものだと診断し、薬を処方しましたが一向に症状に改善が見られず、やがてより深刻な事態であることが判明します。

生後二ヶ月になったとき、マイルズは高熱と発作に襲われます。搬送先の病院で検査を受けた結果、「原発性高シュウ酸尿症」との診断が下されたのです。過剰に産生されたシュウ酸により腎不全が進行し、最終的に末期の腎不全状態に陥る病気です。マイルズの場合は早急な腎臓移植が必要でした。

マイルズは臓器移植のドナー待ちリストに登録され、週5回の透析療法が始まりました。それと同時期にライアンの延命のための集中化学療法が開始されました。父と息子は闘いながら、安らぎを分かち合い、希望と恐怖が交錯する中、懸命に病に立ち向かいました。

半年が過ぎても、マイルズに適したドナーは見つかりませんでした。医師には適合者が見つかるまで6年がかかることもあると言われましたが、その頃にはもうライアンが生きている保証はありませんでした。幼い息子が生きながらえるために機械に繋がれ続ける姿は痛ましく、アシュレーとライアンは胸が潰れる思いでした。

その頃、アシュレーは必死の思いでFacebookを通じて友人たちに呼びかけます。

「あなたの『死ぬまでにやっておきたいことリスト』に『命を救うこと』は入っていますか?」

するとこのFacebookの投稿を見たアシュレーの元同級生エリザベス・ヴォロドゥキィエッチが、出来る限りの支援をしたいとアシュレーの呼びかけに応えてくれたのです。

アシュレーとエリザベスは同級生時代に親しい付き合いがあったわけではありませんが、エリザベスにとってそれは重要ではありませんでした。

幼い子供の命を救うため、マイルズと同じ血液型のエリザベスは腎臓の一つを提供したいと名乗り出てくれたのです。そして検査の結果、エリザベスはマイルズのドナーとして適合することが判明します。

マイルズに可能性が開けたその瞬間、アシュレーとライアンは突然舞い込んだ幸運が信じれらなかったといいます。

移植手術は2017年2月に予定されました。通常子供は回復が早いことから、医師たちは手術の成功を信じていました。マイルズは移植した腎臓への拒絶反応を防ぐため、生涯投薬を続けなければいけませんが、術後は健康で長い人生を手に入れることができます。

「とりわけ親しい付き合いがあったわけでもないのに、快く腎臓を提供する申し出をしてくれたエリザベスの善意に感動しました」アシュレーは言います。

医師の予想通り、手術は無事成功しました。手術室でエリザベスは施術前にマイルズに向けて投げキッスを送ったそうです。

これまでライアンとアシュレーに背を向けてきた幸運がようやく二人に微笑んだようで、ライアンの癌との闘病にも、明るい兆しが見え始めたといいます。

健康に回復を遂げる息子の姿をライアンは大喜びで見守っています。彼にとって何よりの恐怖は、一人息子の回復を待たずして先立つことでした。病に苦しむ我が子を残し亡くなることを危惧していたのです。しかしもうその心配は不要です。

マイルズとアシュレーは、エリザベスに感謝しきれないと語っています。子供のために進んで身体の一部を提供してくれた寛大で勇気ある人物のおかげで、一家は「時間」という素晴らしい贈り物を授かることができたのです。

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