世界的俳優・三船敏郎はアメリカからのオファーを3度も断った。しかし1年後完成したその映画を観て死ぬまで後悔した。

三船敏郎の名前を聞いたことがない人はいないでしょう。絶大な知名度を誇る世界的な俳優で、同じく世界的な名声を持つ映画監督・黒澤明とのコラボレーションは敗戦に沈む日本に誇りを取り戻させたと言えるほど素晴らしいものでした。「羅生門」「七人の侍」「用心棒」などといった作品群は、映画の聖地ハリウッドの制作者たちにも多大な影響を与え、三船敏郎の名前はまさに日本の俳優の代名詞と言えるものとなりました。しかしそんな名声を欲しいがままにした三船敏郎も、悔やんでも悔やみきれない出来事がありました。

時は1970年代半ばまで遡ります。「七人の侍」などの成功で当時すでに世界的な名声を築いていた三船敏郎に、アメリカから突如オファーが届きます。それは、アメリカの新人監督が制作するSF活劇への出演依頼でした。「剣術の達人」という設定でしたが、日本人の魂に誇りを持っていた三船は、サムライ的な要素がハリウッドで安っぽく使われてしまうことを懸念し、断ります。

アメリカの制作陣はそれでも粘り、黒い鎧に身を包んだ顔が出ない役での出演ではどうだろうかと打診してきます。しかし三船の意志は固く、結局それも辞退することになります。しかしそれが一生の後悔になるなど、三船はそのとき知る由もありませんでした。

時は流れ数年後、何気無く新聞を読んでいた三船。そこで、信じられない記事を目の当たりにします。アメリカのほぼ無名の新人監督が制作したSF活劇が、世界中で空前絶後の大ヒットを記録しているというではありませんか!その映画の名は『スター・ウォーズ』…紛れもなく、三船がオファーを受けていたその映画でした。

映画ファンの間ではよく知られた事実ですが、『スター・ウォーズ』の生みの親であるジョージ・ルーカスは、黒澤明監督の作品群に大いに刺激を受けてこのシリーズを制作したと言われています。その証拠に、スター・ウォーズの脚本の初期段階では、主人公の名前は「アキラ・ヴェイラー」となっています。言うまでもなく、黒澤明監督の名前から取ったものでしょう。言われてみればスター・ウォーズシリーズは、刀(ライトサーベル)を携えたサムライ(ジェダイ)たちが正義のために闘う、宇宙を舞台にした壮大な時代劇のようにも見えます。ルーカスが三船をどうしても起用したかったのも、黒澤映画に対するリスペクトがあったからでしょう。

当初ルーカスはオビ=ワン・ケノービ役のオファーを三船に出していました。主人公ルークを導く、非常に重要な役どろこです!しかし断られてしまったため、今度は違う役でのオファーを出します。それは全身真っ黒の鎧に包まれた世界で最も有名な悪役…そう、ダース・ベイダーです!しかし結局、三船はどの役も受けることはありませんでした。
みなさんご存知の通り大ヒットしたこの映画は次々と続編が作られていき、3作目である『ジェダイの帰還』を制作時、スタッフはまたも三船にダース・ベイダーのオファーを出したと言われています。しかしもうこの時も三船は断りスタッフを騒然とさせます。半ば意固地になっていたのかもしれません。

いかに三船とは言え、この読み違いに大いに地団駄を踏んだと言われています。子供向けの陳腐なSF活劇になるであろうと言われていた映画が、ここまで大ヒットするとは誰も予想できなかったのです。

ところが、「あの時に役を受けていれば…」と後悔に沈んでいた三船に、またしてもアメリカからオファーが届きます!今度こそと三船は、よく考えもせずにその役に飛びつきます。

その映画は『1941』。アメリカの名匠、スティーブン・スピルバーグの映画です。しかし結果は散々なものでした。真珠湾攻撃の6日後をドタバタタッチで描いたこのコメディ映画は、興行的に大惨敗し、批評家からも観客からも嫌われました。今でもなお、スピルバーグの一番の駄作と言えば本作が挙げられるほどです。三船が演じた日本人司令官ミタムラもお世辞にも威厳のある役とは言えず、三船はさらに深い悲しみに突き落とされてしまうのです。

その後、盟友であった黒澤明監督とも折り合いが悪くなってしまい、徐々に三船のキャリアに翳りが見え始めるようになります。1997年、77歳でこの世を去りました。

もし三船がダース・ベイダーを演じていたら映画史はどう変わっていたことでしょう。ルーカスは「もしミフネがOKしていれば、僕は姫(レイア)の役も日本人に変更していただろう」と語るほど、黒澤映画に惚れ込んでいたと言います。

海外で『将軍』と呼ばれるほど無敵のイメージがある三船でも後悔に苛まれるという人間らしい側面があったということを伝えてくれますね。サムライとしての魂を守ろうとしてくれた三船にも、日本のスピリットに敬意を払おうとしてくれたジョージ・ルーカスにも、感謝の気持ちを忘れずに映画を鑑賞していきたいものですね。

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