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ジーンとくる話

この動物を見たとき、獣医は焼きごてを引っ張り出した。しかし戻ってきたペットを見た飼い主は、思わず嘔吐した。

リアーン・ローリセラは、Goats of Anarchyという団体の創立者です。この団体では、特別な支援を必要とするヤギの保護活動を主に行っています。

リアーンがこのヤギと初めて出会ったとき、彼女は保護してあげる必要性を強く感じたといいます。このヤギはまだ生後1週間半ほどで、体重もわずか1キロ弱しかなく、鳴き声もかすかで弱々しいものでした。

「まるでネズミのようにか弱い声をしていました。トーンも高すぎて、人間がまねしようとしてもできないほどです。身体も本当に小さかったので、キーッキーッというとても甲高い鳴き声でした」

この小さなヤギは生まれつき脚に奇形が見られ、困り果てた飼い主がリアーンの所に相談に来たのが始まりでした。

飼い主は検査のために獣医にも連れて行ったそうですが、そのとき獣医が検査のため頭部の毛を剃ろうとした際に、将来角として成長するはずの突起物の部分を焼きごてで潰してしまったのです。この飼い主はヤギの生態などについてまるで詳しくなく、このような措置が必要だったのかどうかも判断がつかなかったといいます。

「話を聞いて、怒りのあまり震えを抑えることができませんでした。この子はまだ小さく幼い赤ん坊です。頭にキスしてあげるのならわかりますが、一体なぜそんな処置を施そうと思い立ったのか全く理解できませんでした」後にリアーンは語っています。

彼女はこの赤ん坊ヤギにローソンという名前を付けました。「前の飼い主によると、その獣医はこの子の角を焼き潰してしまうことを強く主張したそうですが、すべて処理が終わったとき彼女はあまりの様子に思わず嘔吐してしまうほどだったそうです」リアーンは話します。

今回のようにまだ幼いヤギのうちに焼きごてで角を焼きつぶしてしまうという処理は、多くのヤギ生産農家で一般的に行われている方法だそうです。こうすることで角を循環するはずの血管が破壊されるため、将来的に角が生えにくくなるのです。

角があると例えばフェンスに引っかかったりお互いにケンカして傷つけあったりといったリスクがあるため、特に狭い敷地で多くのヤギを育ててヤギ肉やヤギの乳を生産している農家たちはこのような処理を行うことが通例となっています。しかしリアーンはこのような措置は残酷で、必要のないものだと感じていました。 

リアーンはその理由をこう話します。「ヤギたちは、この処理を行われる際、激しく泣き叫びます。専用の箱のようなものに押し込められ、穴が開いた部分から頭だけを出して暴れないよう固定されるのです。これはまさに虐待だと思います。ヤギの角にはたくさんの血管が通っており、体温を調節する機能を持っています。角があるおかげで彼らは夏は涼しく、冬は暖かくいることができるのです」

さらに、このような処理を受けたヤギの角は異常な生え方を見せるようになってしまうそうです。「オスのヤギはホルモンの影響で、このような処理を行っても1年もすれば再び角が生えてきます。しかしすでに正常な角の成長は破壊されているため、一般的な生え方と比べて成長はとても遅くなります。さらに生え方も歪んだり丸まったりとなってしまい、生えた角で逆に頭をケガすることもあるため、ずっとケアしてあげる必要が出てきます」

彼女はこうも話します。「また、角を潰してしまう処理によって、例えば髄膜脳炎という病気を引き起こす可能性も指摘されています。これは、脳やそのまわりの組織に腫れが発生してしまうという恐ろしい病気です」

リアーンには角を失ったローソンのため、あるアイディアを思いつきました。「『もうこれで、この子は可愛い赤ん坊の写真を残しておくこともできないのね』、と私は思いました。。ローソンの頭にはもう醜い虐待の跡が生々しく残ってしまっているからです。そこで私は、『それなら何か可愛らしいかぶりものをさせてあげるのはどうかしら…そうすれば角が潰された跡も目立つことはなくなるかも』と考えたんです」

動物の角を潰してしまうという行為は特に何の差し迫った理由があるわけでもなく、また病気などのリスクも発生させてしまうような措置です。さらに、彼らが頭を焼かれる際の痛みや苦しみなどは言うまでもありません。獣医のような専門家ですらこのような措置に加担しているという事実は理解しがたいものだとリアーンは訴えます。

ローソンの角は少しずつ伸び始めているということですが、しっかりと生えそろうまでリアーンはこの可愛らしい帽子をかぶせてあげようと考えています。本当にこれ以上ないほど愛らしい姿です。現在ローソンは施設でしっかりとケアされながら暮らしているそうです。Goats of Anarchyでは、寄付も随時募集しています。リアーンは今後もヤギの保護活動を続けながら、ヤギの幸せを追求していくつもりだといいます。