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夫が突然死んで家中が花だらけになった。8年後、その理由を知って胸が締め付けられる。

ピアノ講師の佳代さんは、2005年4月25日、JR福知山線脱線事故で夫・浩志さんをを亡くしました。出勤中だった浩志さんはあの日、1両目に乗っていたのです。愛する人の突然の死。うつ病を患い、絶望のどん底にいる佳代さんを支えてくれたのは、今は亡き母・淳子さんと友人たちでした。

事故から8年を迎えた2013年、周囲の支えを強く実感した佳代さんは、前向きに生きていくことを改めて決心します。その一歩にと、夫婦の最後の思い出の場所を訪れ、また、和洋紙卸会社の柿本商事が毎年企画している「恋文大賞」に応募したのです。天国の浩志さんに宛て、思いをしたためたラブレターがこちらです:

「天国の浩志くんへ
 もう迎える事のできない誕生日、結婚記念日。ふと想い出しました。
 初めて出会ったことを。
『行ってきます』『行ってらっしゃい』の言葉が最後になるとは思ってもみませんでした。それから約20分後、JR福知山線脱線事故が起きるなんて、まさかこんなに寂しく苦しい日々が来るなんて思ってもみませんでした。いつものように『おかえりなさい』と云えると思っていました。
 その日は雲ひとつない青いきれいな空でした。突然空に舞い上がったあなた。私ひとりを残して旅立ってしまいました。あなたのところへ逝きたいと思いました。寂しくて寂しくて何度も何度も泣きました。
 最後に旅した長崎のハウステンボスで見たチューリップのじゅうたんが忘れられず、いつしかチューリップを集める事が生きがいになりました。
 今では家中チューリップの花やグッズでいっぱいです。
 事故後どうしても行けなかった想い出の場所へ八年経ってやっと行く事が出来ました。あの時と同じ満開のチューリップ。どうしてあなただけがいないのだろう……。涙が止まりませんでした。
 でもチューリップの前で約束しました。どんなに辛くても泣かずに負けずに生きてゆきますって。涙と悲しみの日々は私を強くしてくれました。
 私は今再びあなたに恋をしています。夢の夢だとわかっているけれど、あなたに逢いたい。返事の来ない恋文を書きながらあなたの笑顔がぼやけて見えません。本当に本当にあなたが好きでした。この想い、あなたに届くかしら……。あなたが逝って八年、たくさんの人と出逢い、優しさや思いやりに感謝という温かさを感じられるようになりました。
 幸せをありがとう。出会ってくれてありがとう。最後に我がままを云ってもいいですか。
 私がそっちへ逝った時はあの優しい笑顔で迎えて下さい。そして「おかえりなさい」って云わせて下さい。
 あなたに出会えて心から幸せです。もう少しこっちで精一杯生きてみます。待っていて下さい。
 心の中にいるあなたへ。『ありがとう』」

tulips

このラブレターは、応募者4747人の中から入選者185人に選ばれました。初めて夫へ書いたラブレターからは、佳代さんの浩志さんに対する大きな愛情と、前向きな気持ちが伝わってきます。会いたい気持ちは変わらず、悲しみは消えずとも、前を向いて歩んでゆくことはできるということを教えてくれるようです。佳代さんはその後、友人とともに、大切な人を亡くした人を音楽で励ますグループを結成。忘れられる痛みを知るからこそ「私は覚えている」というメッセージを音楽で伝えたいという佳代さんは、被災地など、全国各地での演奏活動を通じて人々に勇気を与え続けています。

毎年5月23日は、「こい(5)ぶ(2)み(3)」の語呂合せと、浅田次郎原作の映画『ラブ・レター』の公開初日であったことから昭和21年に松竹株式会社が制定した記念日「ラブレターの日」です。です。今年、大切な誰かにラブレターを書いてみませんか?

惠蓮夫婦

(*画像はイメージです)