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若い女性は浮浪者に硬貨をあげるために財布を開いた。一か月後、彼女は鏡に映る自分の顔を認識できなくなっていた。

イギリス人のケイティー・パイパーは、若くして多くを手に入れていました。昔から憧れていたファッションやメディアの業界で働き、友人、そしてゴージャスな美貌にも恵まれていました。彼女の美しさは周りの多くの人の注目を集めたそうですが、その中にはもちろん招かざる注目もありました。

2008年のある日ケイティーのFacebookアカウントに、面識もないとある男性からメッセージが届きます。男はダニエル・リンチと名乗り、彼女の輝かしいキャリアを見てコンタクトを取ってきたようでした。

ダニエルと初めて直接会ったとき、ケイティーの目に彼はハンサムなルックスと高い知性、そして包容力を兼ね備えているように映ったといいます。ダニエルの非常に紳士的な物腰に魅力を感じたケイティーは、再びデートをすることを約束して別れました。 

ところがそのわずか数日後、ケイティーはダニエルから恋の告白を受けます。このときケイティーの心の中にあったのはロマンティックな感情よりも、1度しか会ったことがない相手に告白されるという違和感でした。自分の直感に従って彼のことを冷静に観察していたケイティーは、ダニエルの言葉と自分の目で見た事実との矛盾に少しずつ気づき始ます。やはりダニエルは何かがおかしい、彼女はそう感じるようになっていきます。

 

ケイティーはすぐに、ダニエルが些細な問題に対しても暴力的な行動を取るようになったことに気づきます。友人たちにダニエルと連絡を取るのをやめるようアドバイスされたものの、好奇心に駆られたケイティーは知り合ってからわずか2週間にも関わらず、ダニエルに誘われた週末旅行に出掛けることを承諾します。

しかし、旅行先のホテルで、ケイティーはダニエルから激しい暴力を振るわれ、レイプされてしまうのです。

「そのとき、ボーイフレンドとして付き合おうかと考えていた男性に激しい暴行を受けた。後頭部に手をやると、ドクドクと血が流れ出ているのが分かった」後に自らの体験をまとめて出版した「Beautiful」という本の中で、彼女はこうつづっています。そのときダニエルはカッターナイフを取り出し、殺してやると脅迫しながら、彼女を何度も切りつけたといいます。

その後、彼はケイティーを車で家まで送っていき、このときの出来事を決して誰にも話すなと念を押して去っていきました。

ひどい傷を負った彼女は病院で治療を受けることになりましたが、結局彼女はダニエルにされたことを誰にも話さなかったといいます。あまりの出来事に、冷静な判断力を失っていたのです。

次の日、ケイティーは再びダニエルから連絡を受けました。彼は昨日とはうって変わって優しく温かい声で彼女に話しかけますが、その内容は彼女のあらゆる行動を束縛しようとするものだったそうです。それからの数日間、彼はケイティーに数時間置きに連絡を取り、今彼女が何をしているのか、どこにいたのかといった質問を繰り返すようになります。

そして、あのひどい暴行を受けた2日後、ダニエルからケイティーに謝罪の連絡が入りました。彼はすべてを説明したいとメールを送ったので、それを確認しにインターネットカフェに来てほしいとケイティーに懇願します。彼はケイティーに渡すためのプレゼントも用意したと話したそうです。

当時ケイティーは家にインターネット環境を持っておらず、それを知っていたダニエルは彼女を誘い出そうとしたのです。 

仕方なく彼女は近所のインターネットカフェへと向かいましたが、その入り口のあたりに、コーヒーのカップを手に持った1人の浮浪者がいるのが目に入りました。その男性はおもむろにケイティーの方へ歩み寄ってきました。お金を恵んでほしいのかな、彼女はこのときそう考えたそうです。しかし、彼女が動こうとした次の瞬間、男性はカップに入っていた液体を彼女の顔に投げかけたのです。

「その瞬間、私は一体何が起きたのかわからなかった。でも、すぐに激しい痛みが襲ってきた。そのまるで爆発を食らったような苦しみは、私が今まで体験したこともないような激しいものだった。その痛みはすぐに私の全身を炎のように包んでいった。顔が燃えているような感覚があり、まるで炎の中に飛び込んだみたいに熱かったのを覚えている」 

このときダニエルがケイティーのために用意していたプレゼントとは、彼女の顔を溶かしてしまうほどの強力な硫酸だったのです。  

顔の皮膚が溶けていくのを感じたケイティーは、叫び声を上げながらインターネットカフェの中へと駆け込みます。すぐに救急車が呼ばれ、彼女は病院へと運ばれました。診察の結果、ケイティーは顔全体に3度の火傷を負い、片方の目も失明していることが判明しました。また口と食道、さらに酸が飛び散った身体全体にも火傷を負っていました。

ケイティーはその後、12日間強制的に昏睡状態に置かれます。やがて彼女の顔を再建する手術が始められましたが、この手術は最終的に40回も繰り返されるほどの大掛かりなものとなりました。

暴力を受け、自分の顔をまともに鏡で見ることもできない状態になり、ケイティーは仕事も、顔も、そして人間としての尊厳も失ったと感じていました。しかし、惨めな気持ちのままで落ち込んでいるような性格ではありませんでした。こんなことで人生を破壊されてたまるか、そう考えて立ち上がったのです。

自分の恐ろしい体験が他の人の助けになるかもしれない、そう考えた彼女は、自分の人生や仕事を取り戻すべく、大きく動き出します。ケイティーは自分の体験をドキュメンタリーや本という形で人々と共有していくというライフワークを始めたのです。

「私は生きていく道を選んだ。今では自分の傷跡も愛することができるようになったわ。私に新たな人生を授けてくれたものだから」

 

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一方ダニエル・リンチについてですが、彼は終身刑が確定したそうです。また捜査の結果、ケイティーに酸を投げかけたステファン・シルヴェスターも結局浮浪者ではないということがわかりました。ステファンはダニエルの計画的共犯者と認定され、ダニエルとともに人生を牢獄の中で過ごすことになるそうです。捜査員は比較的簡単にこの2名を逮捕することができました。というのも、ステファンはケイティーに酸をかける際に自分も多少の火傷を負っており、その場面が防犯カメラにしっかりと記録されていたからです。また、ダニエルには過去にも高温の熱湯を人にかけたという罪で逮捕された過去があったことが後に判明します。

凄惨な事件の被害者となってしまったケイティーですが、現在彼女はイギリス国内で有名人として活動しながら、交際相手からの暴力を受けた人たちや酸による攻撃を受けた被害者たちからも大きな支持を得る存在となっています。強靭な意志で人生を取り返した女性として、他の多くの女性たちに勇気を与えています。私生活では結婚もして娘も産まれ、家族とともに幸せな生活を送っているそうです。

 

Mixing my @bodaskins jacket with @victoriabeckham dress and @manoloblahnikhq heels

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女性に対する暴力の大半は悲劇的な結末を迎えるものも多くあります。ケイティーは、暴力の被害を受けている人々に、助けを求める、助けを差し伸べることの必要性を訴えています。声を上げれば助けが待っているということを、できるだけ多くの人に認識して欲しいというのがケイティーの願いです。