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母親は娘2人を井戸の中に閉じ込めた。救出されたとき、2人は恐ろしい光景を目にする。

南米チリは、日本と同様に地震や火山噴火が頻発し、津波などの被害に見舞われやすい地域です。近年では温暖化が原因とされる水不足と干ばつに悩まされており、大規模な森林火災が多発しています。

今年の始めも異常な高温が続いたチリ国内では100以上の山火事が発生し、緊急事態が宣言されました。

炎は数週間燃え続け、30万ヘクタールという広大な土地が焼失し、学校、保育園、商店、郵便局などを中心に1000を越える建物が被害にあった他、警察、消防隊員など11人の命が失われるなど史上最悪の被害を記録しています。被害の拡大については、非常事態に対処できるだけの十分な設備がなかったことが理由に上げられ、政府の火災への対応について猛烈な批判が寄せられました。

チリ中部ビオビオ州にあるウラルキ村も、今回の森林火災に襲われ壊滅的な被害を受けた村の一つです。その村で奇跡の生還を遂げた親子の体験が、今チリで話題となっています。

炎の驚異が迫る中、カルロス・ガルシアは村はずれで消火活動に参加していました。しかし燃える木々に土をかけるという作業は、炎に勢いに太刀打ちできるものではありませんでした。

そのとき炎は、カルロスの妻シルバナと娘二人が待つ自宅にも迫っていました。火のまわりがこんなに早いとは、誰も予想していなかったことです。その勢いは激しく、シルバナは走って逃げても煙に巻かれてしまうだろうと判断し、娘たちと共に自宅の敷地内にとどまることを決断します。

シルバナは娘たちを連れ、自宅の庭にある井戸へと急ぎました。

Youtube/America Mia

シルバナは、まず娘たちの体にロープを巻き付けて深さる3メートルほどある井戸へ一人ずつ慎重に降ろしていきました。二人が無事に降りたことを確認してから、自分もロープをつたって井戸の中へと入り、内側から井戸の蓋を閉めました。

1,000度以上の猛火があたりのものをすべてを焼き尽くしていく間、むしむしと湿った井戸底の暗闇の中で母と娘たちは待ち続けていました。

村はずれに避難していたカルロスが自宅へ戻ってきたのは、それから二時間後、火の勢いが収まった後のことでした。自宅は全焼し、家が建っていた場所にはまだ煙がくすぶっていました。妻や娘たちの姿がないことに、カルロスは不安を感じたと言います。

Youtube/America Mia

しかしすぐに、井戸の中から助けを求める声がすることに気づきました。まだ熱を持ったカバーを外して井戸の中を覗いたカルロスは、そこに妻と娘たちの姿を見つけたのです。その後間もなく助け出された母と娘は、辺りの光景を目にして思わず立ち尽くしたといいます。家族の畑、家畜小屋、すべてが炎に焼き尽くされていました。

元々貧しかった家族は、この山火事で少ない財産の全てを失いました。しかし今は現実と向き合うよりも、この惨事を家族揃って生き抜くことができたことを感謝していると言います。

シルバナとカルロスの体験は、こちらの動画で紹介されています。(スペイン語音声のみ)

世界中で相次いでいる山火事被害、その規模と被害はいずれも増大傾向にあります。温暖化の被害は避けられなくとも、各政府はその原因の削減とともに、予測される影響への対応力を付けていかなければなりません。シルバナの家族が落ちついた暮らしを再び取り戻せることを願うと共に、チリ中部の被害を受けた地域の一日も早い復旧を祈るばかりです。