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えらい

男性は毎朝ハンマーを手にして消えていき、夜になると帰って来た。22年後、彼の業績に人々がようやく気付く。

ダシュラト・マンジは、インドの小さな村で一生を過ごした男性です。彼と妻のファルグニは、決して豊かな暮らしをしていたというわけではありませんでしたが、お互いに愛し合い幸せに過ごしていました。しかし、あるときファルグニが重い病にかかってしまい、医者に診てもらわなければならないという状況に陥ってしまいます。そのため夫婦は、病院がある最寄りの町までの80キロもの道のりを歩いていかなければなりませんでした。彼らはできるだけ道中を急ごうとしましたが、街までの道は治安も悪く、わざわざ迂回して山道を行く必要がありました。

Youtube/Milaap

しかしファルグニは、残念ながら街までの道中に亡くなってしまいました。

ダシュラトにとって妻を失ったことは大きなショックでした。つらい悲しみを抱え、彼は妻のいないこれからの人生をどう生きていけばいいのかと途方に暮れます。怒りと悲しみの中、彼はやがてある一つの計画を思いつきます。そして数日かけて、彼はその計画のために必要な道具をそろえたのです。

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彼が思いついた計画とは、途方もない労力と時間を要するものでした。彼は、彼らの前に立ちふさがって妻の生きる希望を無残にも奪った憎き山を崩し、山を貫く道を新たに切り開こうと考えたのです。

こうして、ひとかきひとかき、小石をひとつずつ取り除くという気の遠くなるような作業が始まりました。終わりの見えないようなプロジェクトではありましたが、彼には明確な目標がありました。誰にも同じ思いをして欲しくない、彼はそう考えたのです。

ダシュラトの息子によると、彼の父が使用した道具はたったのこれだけだったそうです。

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ダシュラトは、悲しみに突き動かされ、自分の生まれ故郷の村に明るい未来を届けるために、来る日も来る日も掘り続けました。

彼はその後なんと22年間もの間、一日も休むことなく毎朝夜明けに山へと出かけていったそうです。

彼は2007年に亡くなるまで、いつしか儀式のようになっていった行動を止めることはありませんでした。

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そして、ついに彼の強い想いが結実する日がやってきます。高さおよそ8メートル、幅およそ9メートル、全長900メートルもの立派な道が完成したのです。

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22年前にこの壮大な計画を始めたダシュラトでしたが、村人たちが彼のこの行動の意味を理解し、引き継いで道を完成させたのは彼の死後でした。

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ダシュラトの思い描いたこの計画の完成により、彼の村だけでなく近隣の村の人々にとっても暮らしが劇的に変化したといいます。これまで80キロもかかっていた最寄りの街までの道のりが、今ではわずか5キロほどしかかからなくなったのです!かつては完全に街から切り離された生活を余儀なくされていた村の人々は、今では歩いて街へと繰り出し、病院や学校はもちろん、商店へ買い物へ出かけられるようになりました。

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彼らの暮らしはまさに一変しました。村の子供たちも学校へと行けるようになり、人々も街へ仕事に出かけることが可能になったのです。

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かつてダシュラトは村人たちから頭のおかしい狂人と呼ばれていたこともありました。しかし、今では彼らのダシュラトへの見方は180度変わったといってもいいでしょう。「ダシュラトは怒りに突き動かされた男だった。彼の業績も、表彰されしたり褒められることもなかった。でも、彼は様々なものを私たちにもたらしてくれた。今では村の人たち皆の心の中で彼は称えられている」村人の一人は話します。

この偉大な男性について特集した動画はこちらから観ることができます。(英語字幕のみ)

ダシュラトの妻に対する愛、そして妻の死による深い悲しみは、彼にとてつもない力をもたらしました。その力はまさに文字通り、山をも動かすほどのものだったのです。

残念ながら村人たちの感謝の気持ちはダシュラトが生きている間に届けられることはありませんでしたが、彼らは今その埋め合わせをするかのようにダシュラトの偉業に感謝し、心に刻みつけながら日々を暮らしているといいます。村に新たな希望と未来を与えることになったダシュラトの決意は、これからも人々に称えられていくことでしょう。