国内わずか2頭 病気の子ども達に勇気と癒しを与えるファシリティ・ドッグ

小児がんは、大人のがんに比べれば患者数は少ないものの子供の病死順位の第1位を占め、毎年2,000から2,500人の子供が小児がんと診断され、今も全国で13,000人近い子供が小児がんと闘っています。 医療の進歩により、小児がんは治る病気になりつつあります。しかし、治療には長い入院生活は避けられず、隔離された病院での生活は子供たち、そして家族にとっても大変過酷なものです。そのため病気によって生じる身体的な痛みはもちろん、入院や治療に伴って生じるさまざま負担を軽減するためのケアが求められますが、日本では高度な医療を受けられる一方、小児がんの子供達と家族のための心理社会的サポートが欧米に比べて少ないとされています。

そんな中、小児がんや重い病気を患っている子供たちとその家族の心のケアのための活動を行う認定NPO法人「シャイン・オン!キッズ」が実施している、日本初の「ファシリティドッグ・プログラム」が注目を集めています。

シャイン・オン!キッズ(旧タイラー基金)は、東京に住んでいた外国人夫妻、マーク・フェリスとキンバリー・フォーサイス・フェリスが、息子タイラーを記念して2006年に設立した団体です。タイラーは生後1か月未満で急性リンパ性白血病を発症し、日本の病院で懸命の治療を続けましたが2歳を目前に短い生涯を閉じました。つらい闘病生活でも笑顔を絶やさなかった、強く元気な男の子でした。

フェリス夫妻は、日本の小児がん患者の子供たちとその家族のための全面的サポートを作り上げたいという思いから同基金を設立。シャイン・オン!キッズは、病気や入院に伴う子供たちや家族のストレスなどを軽減することを目的とした、さまざまな「心理社会的介入」プログラムを全国で実施しています。「ファシリティドッグ・プログラム」もその内のひとつです。

ファシリティードッグとは、病院などの医療施設で難病の子供やその家族に愛情と安らぎを与えるために専門的に訓練された職業犬のことです。

2010年1月、シャイン・オン!キッズが静岡県立こども病院にファシリティドッグを提供し、日本初となるファシリティドッグが誕生しました。こちらが現在も静岡県立こども病院で働いているゴールデンレトリーバーの「ベイリー」と「ヨギ」 、そして2017年に新たに加わった「アニー」です。

病棟を訪問したり、治療や検査、手術に同行して治療等への不安を緩和したり、精神科治療を医師と一緒に行うなど、この2匹患者たちの闘病生活に伴う心の負担を和らげる役目を担っています。ハンドラーと一緒にカンファレンス(治療方針などについて話し合う会議)に参加することもあるそうです。

 ファシリティドッグの大きな特徴は、毎日同じ施設に勤務し、勤務する施設のスタッフとして扱われていることです。ファシリティドッグとの交流は、子供達のストレスを減らし元気づけ検査や手術等に同伴することにより子供たちに勇気を与えたり、入院・治療に対する姿勢を前向きにする効果があることが研究によって明らかにされています。静岡県立こども病院でも「ベイリーがいたから検査ができた」と話す子や、ベイリーと一緒だと笑顔で手術室に入っていける子がいるそうです。

Youtube/TedxTalks

しかし現在のところ、ファシリティドッグは全国でこの3頭しか存在しないのです。ファシリティドッグによる動物介在療法を導入している病院も彼らが活動する静岡県立こども病院と神奈川県立こども医療センターのみ。ファシリードッグのトレーニングセンターも日本には無く、ベイリーもトレーナーもハワイのトレーニングセンターで訓練を受けました。ベイリーのハンドラー、森田優子さんによれば、それは「欧米と日本では、犬に対する感覚が違う」からとのこと。日本の病院では、犬が病院に常駐し、犬を医療スタッフの一員として受けいられるのが難しいそうです。ベイリーも初めは「感染症が心配だから」と言われ、入れる病棟はひとつしかなかったそうです。しかし、子供たちと家族に良い変化があると医師や看護師たちが気付き始め、7年経った今ではほとんどの病棟に入ることができます。

Youtube/TedxTalks

シャイン・オン!キッズでは、ファシリティードッグがいて当たり前の日本を目指して活動を続けています。昨年は、静岡県でファシリティドッグの活動を伝える写真展を開催。プロのカメラマン、そして入院中の子供達が一眼レフで撮影した写真が展示されています。この写真集を全国の病院や教育機関に寄贈するための、目標金額 ¥400,000のクラウドファンディングも行なわれました。


こちらは、ハンドラーの森田優子さんが昨年、静岡市清水区で開催されるTEDxイベントで行なったスピーチの動画です。ベイリーと子供たちのふれあいについて語り、ファシリティドッグが「いたらいいな」ではなく、「必要な存在」であることを訴えました。

1頭のファシリティドッグが年間に関わる子供の患者数は延べ3,000人、活動には800万円の年間プログラム費用が必要だそうです。活動資金は寄付が元になっています。

病気と闘う子供達に、つらい治療に耐える勇気や、癒しを与えるファシリティ・ドッグたち。日本でも「居てあたりまえ」の存在にするためには、まずは活動について多くの人に知ってもらう必要があります。シャイン・オン!キッズの活動を応援したいという方はホームページ、またはFacebookページをフォローすることができます。また、寄付・サポートに関する情報はこちらをご覧下さい。

ハンドラー、そしてファシリティドッグの数が増え、子供たちの入院生活により希望と勇気がもたらされることを願って。

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